事業計画において市場規模をどう捉えるか

市場規模の算出方法には2つのアプローチがある

市場規模の捉え方はベンチャーキャピタリストが出資を見送る理由のひとつ

ベンチャーキャピタリストが出資を見送る理由のひとつ 

サイバーエージェント・ベンチャーズに入って2か月が経ちました。ようやく投資実行できそうな案件も出てきまして、ベンチャーキャピタリストとして充実した日々を送らせて頂いております。

 

実際に直近の私の動きでいうと、最初に事業計画(ビジネスプラン)を伺ってから投資実行に至るまでの確率は、100分の1という感じなので、多くの場合は残念ながら出資を見送っているということになります。その理由のひとつとして「御社にとっての市場規模は?」という質問に起業家の方に充分に答えてもらえていない、というものがあります。

 

例えば、事業計画のプレゼンテーションの”市場規模(マーケット)”のスライドで、

  • ○○経済研究所の調べによると●兆円
  • △△リサーチ調べによると●百億円

など、シンクタンク、リサーチ会社や官公庁等のマクロデータをもってのみ、自身のビジネス領域のマーケット、市場規模を説明しようとしている起業家・スタートアップ・ベンチャー企業の場合がそれにあたります。

 

上述のようなトップダウンでのアプローチは、後述するボトムアップで推定した自社にとっての市場規模を”検算”するうえでは使えるのですが(大きくズレが無いかという意味で)、それだけではベンチャーキャピタリスト・投資家として事業のリアリティ(本当にビジネスとして成立するのか)を感じにくいという問題があります。私の場合はこれだけで出資を見送る可能性があります。それは何故かというと、本来であれば自社にとっての市場規模はユーザーと向き合いそこから積み上げるべきだと考えており、ユーザーの課題を捉えていなければその解決に支払われる金額もわからないはずで、そこの仮説が立てられていない、もしくは立てる努力をしていないと判断できる場合があるからです。

 

たしかに市場規模(マーケットサイズ)の算出方法はトップダウン(マクロ)、ボトムアップ(ミクロ)2つありますが、上記のような理由から、ユーザーやユーザーの課題解決をするプロダクトに集中すべきシード期のスタートアップにとってはボトムアップ、積み上げ型が私は望ましいと考えています。

 

本来の市場規模の定義

  ということで”自社にとっての”ボトムアップでの市場規模の算出方法ですが、

 

『ユーザーが1年間に払う課題解決への対価×課題を抱えているユーザー数=市場規模』 

 

となります。シンプルに言うと最も都合よくいったときの年商(売上高)、とも言えます。

 

自社にとっての市場規模は英語ではTotal Addressable Market(TAM)とも表現されます。マクロ的なアプローチの市場全体のサイズの大きさよりも、”自社にとっての”マーケットサイズがどれほどあるのか、が重要です。既存の競合がいるマーケットだとした場合に、彼らの半値の価格のプロダクトで切り込むのであれば、すべてのクライアントを奪い切ったとしても半分の市場規模になるわけですから。

 

繰り返しになりますが、ユーザーの満たされないニーズ(=課題)があって、その解決のためにユーザーは実際に対価としていくら払うのか、そして、そのユーザー(候補)が世界(日本)に何人いるのか、が自社のビジネスの起点になります。

 

市場のモメンタムも重要

また、もう一つ頭に入れておかなければいけないのは、市場のモメンタムです。TAMが現時点で既に大きい市場なのか、もしくはこれから大きくなるトレンドの市場なのか、そしてその両方なのか、ということです。ビジネスを展開するうえで十分な規模であったとしても、縮小している市場であったり、まだ拡大フェーズに入っていない市場であると自社の事業の収益化、もっというと黒字化が遅れる可能性が高くなります。

 

自社にとってのマーケットが定義できてはじめて、たとえば既存市場のジャイアント企業からシェアを奪うための、もしくは潜在的な新規市場を自社がリードしつつ拡大するための、戦略・戦術についての議論に移っていくことができるのかなと思います。

 

エグゼキューションにも影響

起業家にとっても単なるテクニックや表現の話ではなく、課題やニーズを持つ自社のクライアントを特定するところを足掛かりに事業を組み立てることになるため、結果として顧客の欲するプロダクト/サービスを提供するというしっかりとした軸をシード期から確立することが可能になります。エグゼキューション(実行)し、顧客からのフィードバックを元にPDCAサイクルを回すフェーズでも当然、土台となるペルソナ(ターゲットユーザー)がある分、早く改善が可能になります。マクロデータでごそっと盛り込まれた、ターゲットではないユーザーも含まれた市場に挑むのはどれだけ無駄があるかは想像に難くないでしょう。

 

 

自社にとっての市場規模を特定するということ、ユーザーの課題やニーズに立脚してビジネスを展開することの大切さ、これは時代に関係なく普遍的な要素かと思いますので、ぜひ事業計画を練る際には、創業メンバーで議論を戦わせてみてください。

 

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