起業家は必ずVCから資金調達すべきか

資金調達(ファイナンス)の選択肢

VCを入れずに上場

株式投資をしている人だとご存知の方も多いと思いますが、VCなしで上場している会社は結構あります(IPO投資をしているひとからすると売り圧力が少ないので歓迎する向きが多いのでは)。直近のIT系ですとキャリアインデックスさんの資本政策ではVCからの資金が一切入っていません。

 

いきなり、なぜこんな話をするかというと、最近イベントなどで起業家や起業家候補の方から「どうやってVCから資金調達をすべきか」とか「VCはどこを見て投資判断をするのか」という質問を受けることが多いからです。

 

そう質問されたときに、まず私が思っているのは、

その前に

”VCを入れる必要があるという前提が違うんじゃないかな?”

ということ。

 

資金調達には3つある

ということで、上述のような場面では、私からは

資金調達の手段は3つあるけどわかりますか?

と投げかけています。

  1. P/L(利益)
  2. 銀行(借入)
  3. VC(投資)

これが答えなのですが、1>2>3で検討すべきだと思っています。

 

1.は金利も掛からないし返済期限もない、自由なお金(再投資しないと税金で持っていかれるけど)。

 

2.は金利が掛かるし返済期限もあるし、状況によっては急遽返済しなければならないときもあるが、株価(企業価値)を上げるプレッシャーはない(キャッシュフロー≒返済原資を継続的に稼ぐ必要はある)。

 

3.は金利は掛からないが一定期間内に株価(企業価値)を何倍にも上げないと株主からプレッシャーが掛かったり、状況・契約によっては買い戻す必要も出る。

 

冷静に考えると、まず1。これで事業が立ち上げられるか考えてみると良いかなと。自分たちの考えるサービスのユーザーにとっての価値は何か? 対価としていくら貰えるのか? そのユーザー獲得に掛かるコストはいくらか? そこで見込みがあるなら外部からのファイナンスは必要ないかも。

公庫は例外かもしれないですが、ほとんどの場合は1があって初めて2が成り立つかな。少なくともキャッシュフローがプラスになるのが見えてこないと検討の俎上にすら乗らないと思いますが、それをクリアすれば、金利の負担のみで済むという意味では借入は魅力的です。

 

それでもVCを選ぶ理由とは何でしょうか?

 

VCからの資金調達を選ぶ理由

 

資本政策上、VCを入れる理由があるとすれば、私が思うに以下のような場合かなと。

  • 短期間(1〜5年)に大きく成長させられる【指数関数的成長】
  • いますぐ事業を開始したいが自己資金だけでは足りない【タイミング】
  • 当初赤字が続く(が一定のラインを超えれば収益化が見える)【ビジネスモデル】

一方で覚悟をしなければならないのは、

  • 経営・事業の関係者が増える

ということ。株式の保有シェアや投資契約の内容によってできることは変わってきますが、基本的にコミュニケーションの当事者がひとり(1社)増えるということは事業を推進するうえでは良くも悪くも摩擦になります。

 

つまり、短期間に急成長が望めない(望まない)、コストを掛けずに事業を始められる、という場合に第一の選択肢としてVCを考える必要はないと思っています。

 

VCを活かす方法

一方で、敢えて入れる場合、上手くVCを活用したい場合には、提供してもらう資金以外に

  • 事業を伸ばすためのパートナーになりうるか?
  • 自分たちに足りない視点を提供してくれるか?

について考えてみると良いと思います。IPOやM&Aの際には株主としての立場から離れるため、いつかくる別れが前提のお付き合いなので、その短期間でどれだけ自社の価値を高めてもらえるのか、その点で判断すべきでしょう。

 

求めるものは会社やステージによってさまざまですが、事業ノウハウや営業チャネル、採用やPRの支援など色々ありますね。

 

VCの行動原則

そうは言っても、VCとの交渉の仕方がよくわからない、という相談もあります。VCがどこを見ているのか?という質問の背景はそこだと思います。

 

簡略化すると、VCは期限付きの資産運用ビジネスなので、一定期間(多くの場合は7〜10年)の間に安く買って高く売ってその差額で儲けるという意味では、上場企業に投資をするファンド(投資信託)と行動原則は基本的に一緒です(体制や細かい手法や求められるリターンの大きさは違えど)。将来のある一時期の価格に対して現在の価格が適切か(というか割安か)どうか、見ているということです。

 

ただし上場ではなく未公開企業への投資の場合は少しだけ勝手が違います。何かと言うと

 

”市場がないために株価が定まらない”

 

つまり、買い手(VC)と売り手(企業)の相対取引で都度価格が決まる、あるVCからは10億と言われた企業価値が別のVCでは5億、ということも起こりうるというわけです。流動性がある市場であれば、多数の買いと売りのなかで一つの株価に収斂していくわけですが。

 

同じ金額を投資するのであれば、5年後に1,000億円になる会社に現在10億の評価をつけて投資(100倍を見込む)をするのと、同じく5年で100億円の会社になる現在5億の評価をつけて投資(同20倍)をするのでは、前者に投資をするのがVC的な考え方なのです(これが期間の概念をつけると少しだけ複雑なので省きますが、ご興味がある方はIRRについて調べてみてください。IRR100%がホームラン案件と我々の業界では言われています。)。

 

「他のVCから10億で評価された」と言われても、別のベンチャーキャピタリストは5億で評価するケースもあるし、20億で評価するケースもあります。これは現状を見て判断しているのではなく、いつ、いくらで売れるのかを考えて、そこから逆算で現在の企業価値を評価をしているのだと受け止めてみてください(根拠付けのために各種の株価算定手法があるのは事実ですが)。

 

現状を魅力的に見せようとするよりも、将来のヴィジョンや企業価値をよりリアルに見せていくことで、VCの興味の持ち方が変わってくるので、そこにフォーカスすると、議論も交渉もスムーズに運ぶのではないかと思います。

 

結論

  • VC以外にファイナンス方法はないか?(VCがベストか?)
  • 短期間で急成長を目指すために資金だけでなくパートナーも必要か?
  • 相手はパートナーにしたいVC(ないしはベンチャーキャピタリスト)なのか?

 

初めてVCから声を掛けられると、何故だかそれだけで高く評価された気がしますし(私もそうでした)、舞い上がるかもしれませんが、上記について一度冷静に自分に問いかけてみると良いと思います。

 

この手のテーマは繰り返されるし、今さら感も無きにしもあらずですが、最近よく聞かれていたこともあり、あらためて書かせていただきました。

起業家・投資家・ユーザーの3つの視点からの事業壁打ちは随時受け付けておりますのでご連絡をいただけますと幸いです。

 

また、私の拙い話よりも、系統立ててわかりやすくファイナンス全般、資本政策についてご披露いただいている磯崎さんの「起業のファイナンス」はオススメです。未読の方はぜひご一読ください。

 

その他のブログも見る