起業のコモディティ化

起業と資金調達のハードル

先日米VCの新ファンド設立に関するMediumの記事を読んで感じたことなど。

 

The Midas Listの19位にランクインしているMike Maplesが率いる米Floodgateの新ファンドは、向こう10年、制約条件にとらわれず新しいムーブメントを創出できる、アジリティと厳格な戦略を持つ”Prime Movers”に投資する、と宣言しています。シードマネーはコモディティ化(既にシードファンドが300超、年間1,000億円がシードVCに振り向けられている)、リーンスタートアップ手法も形骸化(立ち上がるけど大きくスケールしない)していることが背景にあるということでした。

 

日本国内ではまだアクティブなVCでも100未満、年間のファンドレイズ額も3,000億円規模ですが、ようやくスタートアップを取り巻くエコシステムが作り上げられつつあると感じています。そして徐々にではありますが、ノウハウの普及とシード資金の投下によって、起業自体のハードルは下がりつつあります。資金調達環境も上場マーケットに左右される部分もありますが、大崩れすることなくこの数年は推移してきています。

 

もし私が時代を選んで起業できるのであれば、資金調達をするのであれば、10年前より”いま”でしょう。

 

コモディティ化の先に

ではここから先10年を考えたとき、どういったことが起こるでしょうか? そのヒントが上述のFloodgateの話なのかなと思っています。

 

日本でも今以上に、起業のカジュアル化、資金のコモディティ化が進むのではないでしょうか。

 

若者が起業することへの抵抗感もなくなり、大学生どころか、高校生起業家も当たり前という時代になっているかもしれません。仮に1学年のうち0.1%でも起業すれば大学生だけでざっくり4,000人の起業家がいる計算になります。

 

そして日本ベンチャーキャピタル協会の目指すリスクキャピタル5,000億円のファンドレイズが達成されれば、約2倍もの資金が投下されていく可能性が出てきます。そのうち10%弱の400億円を学生起業家4,000人に投じれば、1社1,000万円ずつ確保できます。日本においてスタートアップするには全く不足のない金額でしょう。

 

現状は一部のミドル・レイターステージの優良スタートアップへの集中投下がなされている状況ではありますが、今後シードマネーの供給量がシードVCの出現(最初のファンドは小粒にならざるを得ないでしょうが、VCとして独立する方は増えると思います)にともなって増えていくはずです。

 

2014年にはYCombinatorがスタンフォード大学で行った授業をYoutubeで公開しました。直近ではMOOCも始めると発表していましたし、起業における場所や言葉の制約がなくなっていくのは間違いないでしょう。

 

ではお金もある、どう事業を立ち上げたら良いかというHow to start a startupもわかる、となったら、次は何か。周りには起業家だらけ、誰かがスタートアップを始めたら、似たような会社がすぐに10社、20社と出てきてしまう、買収されるのは一部で、大半が事業をピボットするか、事業を畳んで再挑戦のタイミングを伺う。

 

そのような状況では、既に起こっているマーケット・トレンドに乗るような起業は難しくなります。取り組むべきテーマが見つかったのであれば、誰よりも早く事業を立ち上げ、そして素早くトップラインを誰よりも高く持っていけるように、スケール戦略も立ち上げ前からしっかり練っておくことが重要になるはずです。Floodgateのいう「アジリティ」と「厳格な戦略」とはそれを指すのでしょう。

 

とはいえ起業家というものは誰も解決できない課題をクリエイティブに解決する使命があるのだとすれば、本来の立ち位置に戻っただけかもしれません。まだ起業家も資金も少ない日本ではまだ短期的な成功を追えるかもしれませんが、ここから先は「どこまで深く潜れるか、どこまで遠くに行けるか」が起業家として長く生き残り、成功する鍵になるのではないでしょうか。

 

もちろんVCにおいても、コモディティ化した”お金”だけでは起業家に対して価値を見出してもらうのが難しくなると思います。我々も次のステージにいかねばならないタイミングが来ているのは間違いありません。

 

ここで有名なピーター・ティールの言葉を思い出しましょう。

 

「ほとんど賛成する人がいないような大切な真実とは、なんだろうか?」

 

この普遍的な問いに向き合い続けていくことが、コモディティ化の波のなかで勝ち抜く方法なのだと改めて思います。起業家もVCも。

 

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